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こうして『中央線沿線連続婦女暴行殺人事件』は、犯人・谷村和真の逮捕をもって解決し、捜査本部は解散した。
慶子が体を張って採取した谷村の体液のDNAの型は、過去3件の犯人のそれと、完全に一致したのである。
取り調べで谷村は、動機に関してこう供述した。
「遅くまで残業して、ムシャクシャしたからー」
3人の女性の尊い命を奪い、その上遺体を凌辱したこの男、送検され、裁判となる。極刑は免れないだろう。
犯人逮捕に至る今回の慶子の行動に関し、庁内の評価は分かれたが、最終的に刑事部長が以下のコメントを出し、一応の収束をみた。
「雛川警部補の行為は女性警察官としてのモラルを逸脱するものの、犯人を逮捕し事件の拡大と被害者の増加を未然に防いで、都民の安全・安心を回復させた事は評価に値する。よって若干の行き過ぎは不問とする」
庁内の評価より、むしろ慶子にとって気になるのは班内の評価、さらに言えば生田康男の評価であったー。
生田は慶子を守るため化け物と対峙した際、突進してきた化け物に5mほど弾き飛ばされ、頭を強く打ち意識を失っていた。従って慶子と谷村の間で起きた事を、彼は知らない。
次の日の夜、入院先のベッドで意識を回復した生田に、慶子はすべてを話した。涙を流しながらー。
慶子の話を聞き、生田も泣いた。そして詫びた。
「すみませんでした…。俺が不甲斐ないばっかりに、主任にそんな事をさせてしまって…。すべては俺の責任です」
「何言ってるの。あなたは何も悪くない。悪いのは私…。犯人逮捕のためとは言え、女として、してはいけない事をしてしまった。あなたという人がいるのに…。本当にごめんなさい」
生田はベッドから身を起こし、泣き濡れる慶子をそっと抱き寄せ、言ったー。
「結婚しましょう。退院したら」
慶子は生田の体に、しがみついた。
「本当にいいの?私なんかで…」
「あなたじゃなきゃ、だめなんです」
「怖かった…。ほんとはあの時、すごく怖かったのー」
慶子は生田の逞しい胸に、頬を埋めるー。
「もう二度と、そんな思いはさせません。これからは、ずっと一緒です」
2人は、唇を重ねたー。
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