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横工大が大会への出場を辞退ー。
情報は瞬く間に、全国の鳥人類サークルに広まった。
何でも、搭乗する予定だった1年生の女子パイロットが自転車で事故に遭い、重傷を負った。それが辞退の理由であるという。
「だったら、代役を立てればいいじゃないか」
そうした声が、北工大や京工大を始めとする全国のライバルチームから寄せられた。
鳥人類たちの絆はチームを越えて、外部の人間が思うよりずっと深く、固い。
加えて毎年、優勝こそ果たしていないものの横工大の作ってくる機体は関係者の間でも評価が高く、ひいてはメイン設計士である沢崎はライバルチームから一目も二目も置かれる存在だったのである。
そうしたライバルの声に感謝しつつも、沢崎の意思は変わらない。
玲子が乗ることが決まり、今年の機体は沢崎が設計図を引き直して出来たものである。
パイロットが42kgと軽量なのだから、必然的に機体の装備も薄く済む。玲子仕様の、超軽量の機体が完成したのだ。
これに玲子の驚異の脚力を加えれば、今年は間違いなく勝てただろう。
つまり今年の機体は、玲子しか乗ることの出来ないものだったのである。
チーム内からは、今からでも通常仕様の機体を作れば間に合うという意見も出たが、沢崎は取り合わない。
パイロットチームのヤツらは絶対に乗せない。かといって玲子に代わる軽量のパイロットなど、他にいる訳がない。
今年は、出場辞退ー。
そして一体、誰が玲子の自転車のワイヤーを切ったのか。
パイロットチームの誰かであることは間違いないが、事件から2週間、警察に目撃情報は今だに上がってきていないようである。
ならば、俺が白状させる。
沢崎は高山を呼び出した。
夜の部室で、二人は再び対峙するー。
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