2002年(平成14年)6月

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月が明けて6月1日土曜日。1週間の入院を経て、生田が退院した。 その夜、【雛川班】のメンバーは、生田の退院祝いと事件解決の打ち上げを兼ねて、赤坂にある行きつけの洋風居酒屋『苺夜(いちごや)』に集まった。 宴も中盤に差し掛かった頃、慶子は生田に目配せをした。生田は頷き、立ち上がるー。 「えー、わたくし生田康男、この度、結婚する事になりました!」 エーッ?!、お相手は誰ですか?!若い飯塚と矢田が声を上げる。 「相手は皆さんよくご存知の、雛川慶子主任です!」 皆、驚きのあまり、声が出ない。 慶子も立ち上がり、そっと生田に寄り添ったー。 「そういう事になりました。みんな、よろしくね」 高倉が拍手をした。目から涙が溢れている。 「本当によかった…。2人とも好き合っているのに、なかなか一緒にならなくて…。ヤキモキしましたよ、ホント」 お開きになり、皆、席を立つ。慶子は生田に、そっと耳打ちした。 「今夜、そこのホテルのスイートを取ってるの…」 店の目の前に、有名な超高級ホテルがあるー。 「この前のキスの続きがしたいの…。ねえ、いい?」 驚きの表情を浮かべた生田だが、コクっと頷いた。 「でもね、アタシ、ちょっと本庁に戻るよう、係長に言われてるのよ。橋本管理官が、今回の報告書を出せって騒いでるらしくてー」 「俺も行きますよ」 「ダーメ。あなたは病み上がりなんだから。先に部屋に行ってゆっくり休んで、体力を回復させておいて。今夜はきっと、アツい夜になるから…」 悪戯っぽく言うと、慶子は店を出て、タクシーを拾ったー。 結局、橋本に2時間も捕まってしまった。 庁舎を出て、慶子は歩きながらタクシーを探す。時刻は11時を過ぎており、土曜の夜の霞ヶ関の官庁街は人はもちろん、車も皆無である。 彼はまだ起きてるかな、そう思ってバッグから携帯を取り出そうとした慶子の眼前に、突然、巨大な物体が現れた。 化け物である。 慶子は逃げる。が、逃げながら思った。アタシはもう、処女じゃないー。 「アンタ、何でアタシを追いかけてくるのよっ!」 それでも化け物は、執拗に追ってくる。 もしかして…。慶子の全身に、閃光が走ったー。 「コンドーム着けてするのは、ダメなの?!」 化け物が頷いたように見えた。そしてその大口が、ついに慶子の脚を捕らえた…。 化け物の消息は、ようとして知れない。
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