1999年(平成11年)10月

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業界では笑い話で、子役は身長が1cm伸びると一つ仕事が減ると言われている。 しかし子役やその親たちにとって、これは笑える話ではない。 特に女子は、小学4、5年生あたりから、急激に大人びてくる。 こうして真実の子役としての旬な時期は過ぎ、中学生になる頃には芸能界に籍はあるものの、引退したと言ってもいい状態だったのだ。 そして『名無しの子』から5年、中学3年生になった真実に、久しぶりに舞い込んできたのが、今回の仕事である。 しかも真実にとって、初めての映画出演であった。 「監督にお聞きします。今回、朝井真実さんを起用した理由をお聞かせください」 芸能レポーターから質問が飛んだ。 「あ、いや、えーと…」 世界のクロイワが口ごもっている。 この人、ホントは朝井真実なんて知らないんじゃないの…? 記者席がざわめき始める。 出演者側の末席の真実本人は、恥ずかしさと居たたまれなさで、うつむいてしまった。 その時である。出演者席から声が上がった。 「わたくしが監督にお願いしたんです」 澤村美枝子であったー。
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