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僕達、総勢男子生徒五人の文芸部員は、文化祭のためにバンドを組み当日一番大きな舞台で大勢の女子にキャーキャー言われるであろう派手な生徒達のことを、羨ましく妬ましく思っているという点で共通していた。
なら僕達もバンドを組めば良いのだが、楽器を演奏できる者も、歌が上手い者も、それらを練習して上手くなるという自信がある者も、一人としていなかった。
ならば、違う方法で女子から好感を得よう。そう考えた僕らが辿り着いたのは、図書室カフェという出し物だった。図書室ならば、僕ら文芸部のテリトリー。中学生の頃、かっこいいと思ってコーヒー党になってみた僕は、豆を挽くところからコーヒーを淹れることができる程度のスキルを持ち合わせていた。それらを組み合わせることで、おしゃれ女子にも人気の、本が読めるカフェを実現できることに気付いたのだ。
女子からの好感が目的とはいえ、文化祭という舞台で文芸部が文化を疎かにするわけにはいかないので、図書室には文芸部員による自作短編小説コーナーを設け、その横に我らが敬愛するSFショートショートの神様の作品を集めて並べておいた。更に、各テーブルに設置してあるメニュー表には、文芸部員の作品を一篇ずつ、特に短い八百文字以内のもので、テーブル毎に違うものを載せてあるという創意工夫ぶりだ。
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