2人が本棚に入れています
本棚に追加
メニューといっても、書いてあるのはホットコーヒーのみ。図書室ではアイスを提供する環境が用意できなかったからだ。流石にそれだけでは寂しいので、席についた方にはコーヒーと一緒に部員達による手作りクッキーも提供することにした。そしてそれらは全て無料。部費だけで十分賄うことができたからだ。
長居しろとは言わない。僕達が文化祭の主役だとは言わない。ただ、休憩がてらにでも本格ドリップコーヒーを一杯飲みに来て欲しい。その短い時間にでも、文学に触れて欲しい。あわよくば、ショートショートという低いハードルから、文学に興味を持って欲しい。そして更にあわよくば、僕ら日陰男子にも興味を持って欲しい。そんなささやかな願いを込めて、僕ら文芸部の図書室カフェは文化祭開始と共にオープンした。
お昼の時間が過ぎ、いよいよコーヒーブレイクが恋しくなる頃になった。それまでの客入りは、僕らが当初想定していた最悪とは程遠かった。しかし、決して僕らの顔に笑みが浮かぶ結果ではなかった。何故なら、文化祭パンフレットを見て図書室を訪れたのは、そのほとんどが出し物に評価点を付けることを義務付けられた教師ばかりだったのだ。
それ以外のお客といえば、OBの先輩や、父兄の方々がちらほらと訪れるのみ。今現在に至っては、白いスーツに身を包んだ品の良さそうなお爺さんが一人、席についているのみである。地域のご隠居さんか、教育委員会かどこかのお偉いさんだろうか。僕らの小説を小一時間読み耽ってくれているのはありがたいけれど、正直僕らが求めている客層はこういう感じではないのだ。
最初のコメントを投稿しよう!