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学校の数すくない上級生の男の子に、名うての悪ガキがいたんだ。
名をトシユキくんといった。
「女みたいなやつ。キャーと女々しく泣いてみろよ」
図体がばかでかくて、のそりのそりした牛みたいなやつだ──もっとも牛なんて動物は、田舎に来てはじめてお目にかかったけどね。
「ふん、この根性なしのヒョロヒョロが」
トシユキくんはまるで髪についたチクチク草が気になるみたいに、ことあるごとにぼくをいじめた。わけもなくね。
下駄箱にトカゲの尻尾を入れたり(あのウネウネといったら)、椅子にチクチク草をばらまいたり、いちいち紹介したらファミレスのメニューよりも多くなるよ。
「ぼくは根性なしじゃないよ」
ぼくもムキになって言いかえすけど、根性があるかないかなんて学校じゃ教わらないからね。
だから当然のごとく、ぼくは学校を嫌いになった。行くのが嫌嫌病になったんだ。
それは朝ご飯で納豆がでることと、比べものにならないくらいの嫌さだよ。
「学校はちゃんと行かないと、よい大人になれないよ」
お婆ちゃんが田舎なまりで慰めるけど、いまのぼくには納豆を口に突きつけられるのと一緒だ。
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