森の本屋と首なし地蔵

6/16
前へ
/16ページ
次へ
「妖怪ってオバケと同じだから、人の言葉をしゃべれるんだね」 オバケや妖怪の話は、お婆ちゃんから聞いていたから知っていた。 お婆ちゃんは怖がらせようと話すけど、ぼくは夢中になって聞くから「やれやれ」と笑われたものさ。 「人間の言葉はお母さんから教わったんだ。でも人と話すのはこれがはじめてだよ」 「ぼくはヒカルだよ。シロはそこで何しているの?」 「森の本屋さんに行くところなんだ」 ヒョイと二本足で立ちながら、シロがさも誇らしげにこたえた。 シロは二本足で立ち上がると、ぼくと同じくらいの背たけになった。シロとぼくは同級生かな。 「本屋さん? ぼくもつれて行ってよ」 学校の図書室に本が少なくて、ぼくは本を読みたくてしかたなかったのさ。 「ヒカルもおいでよ」 シロがぱたぱたと尻尾招きをした。 だけど、ぼくは足を踏みだせないでいた。 お爺ちゃんから「鎮守の森には入るな」と言われていたからだ。 「……怖いの?」 シロが目をまたたいた。 「怖くなんかないよ」
/16ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加