森の本屋と首なし地蔵

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ぼくは妖怪のシロのあとについて、緑の匂いがふかい鎮守の森に入る。 薄らいでいく夕日のなか、しばらく森をかきわけて行くと、見上げるばかりに大きなカヤの木が見えた。 それは夕焼けを隠すばかりに巨大で、緑の葉を空いちめんに広げていた。 その岩のような表面をした幹といったら、水族館で見たクジラよりも大きかったんだ。 「ヒカル、これが森の本屋さんだよ」 「だってこれ、大きな木じゃないか」 「この長老の木は、すべての葉っぱが本になっているんだよ」 シロがそう説明しながら、苔むした瘤だらけの木に生えた葉っぱをむしった。 そしてまるで何かの歌を口ずさむみたいに、その目を手もとの緑に走らせる。 「これは冬が来るのを教えてくれる風を読む本だよ」 ぼくには緑の葉っぱにしか見えないけど、どうやらシロには何が書いてあるのかわかるらしい。 「これは悪い物を食べたとき、薬になる草を書いた本だね」 「街の本屋さんみたいに、人が死ぬ面白い本とかないの?」 「そんな残酷なのないよ。人間は他人が死ぬのが面白いのかい?」
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