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これは『夢』だということを、俺はわかっていた。
痺れる右手。麻痺したように動かない体。
目の前には額を撃ち抜かれ、地面に脳漿まき散らして倒れる有坂龍一の姿がある。
茶色い髪を赤い血の色に変え、正しい位置にあるはずの目と目の間が焼け焦げて、ポッカリと穴があいている。
地に伏した後頭部は貫通した弾丸でグシャグシャになっているはずだ。
ギリシャ神話の神のように整っていた顔だが、いまは醜く歪めて、龍一は死んでいた。
俺が、殺した。
俺が有坂龍一を、死闘の末撃ち殺した。
この結末を見届けてから、俺は振り返る。
振り返った先には地面に大の字に倒れている保。
「たもっ……、保」
実際に呼んだかどうかなんて覚えていないが、夢の中ではいつだって俺は、かすれた声で保の名前を呼ぶ。
「保っ!」
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