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俺の呼びかけに保は応えない。
早くなる呼吸を繰り返しながら、俺は保の側まで駆けていく。
爆風で焼けた喉がピリピリと痛い。
煙がしみて目がチクチクする。
「保」
口をあけたら、ひどくむせた。
咳のせいで涙がこぼれるが、そんなものにかまっている暇はない。
拭うのも忘れて、俺は保の肩を揺さぶる。
「保っ、おい、しっかりしろ!」
二度三度と揺さぶる。
「保!」
しかし保は目を開けない。
ただグッタリと、されるがままに揺さぶられるだけだ。
保の前面は血で真っ赤に濡れている。
保は、心臓のど真ん中を撃ち抜かれていた。
これでは生きている方が不思議。
生きていたら、奇跡どころかホラーの領域だ。
だけど俺は諦められずに、保の体を何度も揺さぶる。
「保、おい、返事をしろ保っ」
保は即死だったろう。
苦しんだ様子はなく、その死に顔は穏やかといえるぐらい静かだ。
保を撃ち殺したのは、龍一。
龍一を殺したのは俺。
俺たち3人は、さっき本気の殺し合いをやったあげくの結果が、これだ。
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