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あの人は「外へ遊びに行こうぜ」と私に手を差し伸べ、それでも初めは私の抱える内情を知らずして掛けるその言葉に腹が立ったものだ。差し出す手はことごとく振り払われ、それでもあの人は執念深く接するものだから、結果として体力勝負に負け先に折れてしまったのは私の方だった。身体に患うこの難病は誰か友人に相談したところで解決の兆しが見えてくるわけでもないのだからと、生まれ持って与えられたこの試練を一人抱え込むことで本当の自分に蓋をして上辺だけの強い意志を保っていた。その意志を覆して彼に打ち明けたあの時が、家族以外の誰かに吐く弱音として初めてのものであった。無理に塞き止めていた多量の水が一度でもダムから流れ出てしまったが最後、自暴自棄になったが故の行動であったのかは思い出せないものの、あの人の誘いを受けて私たちは手を繋いで日の光降り注ぐ外の世界へと飛び出して行ったのだ。案の定と言えばいいのか、翌日は熱に見舞われた。それでもあの人の暴走は留まることを知らず、熱の原因は自分にあるのだからと付き切りで看病すると言って聞かない。
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