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彼の挙動を観察していると、虫を目で追う様に泳いでいた彼の視線に心持ちの変化が現れた。どうやら一点を行ったり来たりしているようで、おそらくその対象を直視していいものなのか判断できないでいるのだろう。  「私のお腹、気になるの?」  膨らむお腹を掌でなぞりながら、行き交う視線の先を言い当てる。彼はコクッと小さく縦に首を折り、何も言わぬまま手を伸ばしてきた。「優しく触るのよ」と注意を促せば素直に頷き、けれども膨らみに触れる直前で手が止まってしまう。結局、彼は何を恐れたのか小刻みに震える手を引っ込めるのだった。私の警告に怖気付くその様が可笑しくて「そこまで慎重にならなくてもいいのよ」と微笑みかければ、彼は視線だけに飽き足らずとうとう身体まで泳ぎ始める。そして、「えっと……それ、赤ちゃんですか?」と分かり切った問い掛けをするのだからお茶を濁すのが得意なのだろう。
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