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そして、言語から自分より弱い立場の人間を欲しているとも感じられた。自分より弱い立場の者を欲する理由として、私の価値観に従ってそれを悪だと断定できるものとそうでないものと二種類の動機に分けることができる。悪しき理由とはその存在を犠牲にして自分にだけ利益を求めようとする場合で、例えば、自分優位に立てる状況で、これまで別の者から受けた仕打ちと同じことを下の者に仕向けること。例えば、自分より弱い存在の登場により自分に向けられていた矛先がそちらに転換するのを望むこと。とは言うものの、彼の慈愛を含む言葉からこれは違うと切り捨てる。では、もう一方の理由とは。その存在が自分に利益をもたらすと同時に、その存在そのものにも自分がいることで利益となる相互関係である。歳が離れていればそれだけで何をするにも能力は劣る。弟や妹から頼りにされたいと、そう望むのではないだろうか。この仮説が正しいとして、ではなぜそれを望むのだろうか。十にも満たない年端も行かぬ子供ならまだしも、性を理解して間もない彼の様なお年頃で弟や妹を所望するとは思えない。
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