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この仮説に当たりを付けて探っていくとして、そこには常日頃から誰かに頼られたいと望む原因があるはずだ。そうであれば、彼はそれを悩みの種として今も抱えているのであろう。しかし、それを成り行き任せに訊ねてしまえば、自分の悩みと弟や妹が欲しいという願望とを結び付けてしまう。自分を隠そうとする彼のことだから、兄弟を欲する理由を理解してしまえば口を閉ざしてしまうだろう。けれど、知ろうとしなければ力になってあげることもできない。だから、悩みの糸口を別の質問から探る必要があった。
「それをお父さんとお母さんに頼んでみるのはどうかしら?」
「……それは無理だよ」
一拍置いた、その答えるまでの空白に心の声を表す態度が複数見つかる。まばたきが多くなり、そして唇を強く結んだのはまさに拒絶を表すサインだ。赤子を創るための行為を知ったばかりであろう初心な彼らにとって、親に子供を生んでほしいと懇願するのは極めて恥知らずな行動だ。
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