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内容が内容だけに否定したと考えるのが一般的であり、真っ当な思考であろう。しかし、彼が対外的に示したサインは羞恥ではなく拒絶であり、この予想は否定される。残されたキーワードはお父さんとお母さん、つまり両親という単語しかない。安直に考えて、彼は両親を快く思っていないのだろうか。
「もしかしてお父さんとお母さんが嫌いなのかしら? ……なんて、そんなことないわよね。ただ、恥ずかしいのよね」
なるほど、まさしく図星であった。『嫌い』という単語を口にした瞬間に身体が強張ったのだ。ある種の緊張状態は目を疑うほど異常で、冗談まじりに言い換えなくてはどうなっていたことか。嫌悪する対象が目の前にいるわけではないのに、その話を口にしただけで身体の筋肉という筋肉が硬直するのだから、この話題を続けるべきでない。
「そ、そうだよ。赤ちゃん生んで、なんて言えないよ」
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