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4.
「いらっしゃい、今日は何を話しましょうか」
数週間前の出会いから引っ切りなしに訪れる彼は今日も今日とて私の前に姿を見せる。ただただ四方山話に花を咲かせるだけの時間ではあるが、私にとってそれは精神安定剤にも似た効用のあるひと時であった。下らないものから小難しい話まで話題は尽きることもなく続けてきた。
「いいえ、今日は大事な話があって来ました」
看護師のノックを真似て私を騙した彼のことだから、ニヤニヤと嫌らしい笑みを浮かべているのだろうと思った。ところが些細な悪戯が成功して勝利の余韻に浸る彼など何処へやら、表情に加えて態度までもが普段の彼とは似ても似つかない。
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