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 結果的に言えば、私が立てた仮説は八割り方正しかった。カウンセラーあるいはネゴシエイターの真似事か、過去にその手の書物を道楽として読み漁った私は彼の本音を数回に分けて聞き出すことに成功したのである。平たく言えば有り勝ちな悩み、けれど彼は重く受け止める、その重さを問えば『世界中で誰よりも不幸な自分』と思えてしまうほどに。けれど、大の大人が涙を流しているではないか、その私を目の当たりにした彼は痛みを知る者が自分だけでないと痛感した。少年はこの日、不幸を呪い不幸をかざす愚かさを子供ながらに思い知る。彼が必要以上に姿を出し渋る理由はここにあったのだ。
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