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「悪魔だなんて酷いな。いや、間違いではないのか。悪魔から生まれてきた子供もまた、悪魔であるのだから。それよりさ、そんなに死にたいなら殺してあげるよ」
その声に気を取られ、気付いた時にはこれでもかというくらい悪魔の顔は目と鼻の先にあった。そして一閃の刃が空を切り、胸に尋常でない熱が走る。切り裂かれた胸から激しく血飛沫が迸るのを他人事の様に冷静なまま眺めているのだから、どうしてか痛みはなかった。何処からともなく浮かび上がる刃渡り30cmほどはある鋏が私の右腕を切断する。続け様に左腕、そして両足に続き、胴体は三等分に切り分けられる。最後に肩周りと頭とを繋ぐ首へ、閉じた鋏の先端は丸みを帯びているのに、力任せにそれは突き下ろされた。けれど息もあれば、意識すらも薄れることなく残っている。お化け屋敷を体感する様な、どこか他人事であり流されるままに観せられる臨死体験はそれでも尚、恐怖を感じずにはいられない。
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