6.

1/7
前へ
/64ページ
次へ

6.

 悪夢から目覚めた私は台座に無造作に置かれた携帯電話を手探りで見つける。いくらカーテンが閉め切られているとはいえ暗淡とした部屋が、日の出を迎えて間もないことを物語る。輝度を目一杯に弄った液晶画面の光を受けて眼の神経に焼き切る様な痛みが走り、数時間のブランクを持つ瞳孔がその苦痛を緩和するべく躍起になる。その甲斐あって、痛みが引くと共に強過ぎた光量は急速に絞られていった。画面にでかでかと表示された時刻から逆算して睡眠時間は4時間ほどしか取れていないが、あの悪夢の再来を恐れて二度寝をする気にはなれない。彼が訪れなくなって一週間、今から三日前の事、これまでに見た怖い夢はどこか抽象的で漠然とした内容であったが、あの日見た悪夢はこれまでのものとは恐怖の濃度が格段に異なり、B級ホラー映画の様な猟奇的でいて生殺与奪の権を握られる、死を暗示したものとなっていた。一昨日も昨日も同じ悪夢に魘され今日と同様、早朝に目を覚ました。連日の睡眠不足が祟ったのか昨日は昼の時間帯に寝てしまい、甘い期待もむなしく悪夢から逃れられずにいた。
/64ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加