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そう、結果が分からない以上、『何にでもなれる』とは『何にもなれない』ことも含まれるのだ。どうだろう、美しい白も、行くとこまで行けば怖いものに思えてくるのではないだろうか。ここで閑話休題、少年の話に戻そう。
少年を求めて、私は白色の森を歩いている。はらはらと舞う風花の雪によるものでも、わらわらと飛ぶ天蚕糸の蛾によるものでもなく、そこはただただ白に包まれた森である。生きようとする力を失くした植物のみ在る世界である。落ちている枝は乾いた骨の様に脆く、踏み締めれば容易く割れてしまう。木の葉を手に取れば、たちまち砂の様にぱらぱらと形を失う。樹の幹に触れれば、無機質な温度が肌に伝わる。森の奥深くへと足を踏み入れているにも関わらず、微塵も身の危険を感じる要素はなかった。それでも奥へと進むに連れて、不安は大きくなっていく。どこまでも代わり映えのしない景色によって、自分がどの方角を向いて歩いているのかを見失ってしまう。
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