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私の母もその例に漏れず、そしてまた少なくない確率によって私はこれを母から受け継いだ。ところが何の因果か、私の症状は特異なものであった。まず、厄介なのがふとした拍子に起こる内出血だ。転倒による怪我であれば、出血を視覚的に捉えることも、そしてガーゼなどを使い止血することも可能だが、内出血だとそれらは引っ繰り返した様に上手くいかない。程度にもよるが私の場合、肝臓移植もまた治療する手段として視野に入れなければならない。この説明を通して、察しの良い者ならば今直面している問題の予測が立つだろう。お腹に宿る赤子、出産には多量の出血を伴う、故に健常者のそれとは丸で異なり出産に命を賭す覚悟が必要となるのだ。しかし、その予測は見当違いにも程があるというもの、私の場合は初めからその可能性が分かっていたのだから、その覚悟は男女間の行為に及ぶその前にする。ずっと前に夫と話し合って、私たちは生むことに決めていたのだ。私は天使を名乗る少年と出会う三週間以上前に羊水検査を受けた。
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