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その診断結果が返されたのはその出会いの日の数日前のこと、朝食を済ませたばかりの、同じ病棟で過ごす子供たちが騒ぎ出すより前の時間だった。見窄らしい寝間着姿を気にしながら、付き添う夫の隣を私の歩調に合わせて歩く。この季節に加え、早朝の濁りのない澄んだ空気が防寒機能を何ら持たない布地を伝い、鶏卵の殻の様で不健康な血色の悪い肌をぴりりと痛め付ける。廊下と違い暖房の効く、行き慣れた談話室に夫が先行して入室する。主治医の着るよれよれの白衣はいつもと変わらず、胸ポケットに指してあるペンは買い替えたのか、シンプルなデザインの安物に差し代わっていた。主治医の顔は苦虫を噛み潰した様な不安を助長するもので、天使を名乗る少年の時と同じ手法で観察するまでもなく言い辛い何かを抱えているのは一目瞭然であった。そして、私は人殺しの悪魔へと堕ちてしまうのだ。悪魔の子は悪魔、連日の夢の中に登場する悪魔がそう言った。体細胞の中で最も小さい21番染色体、夢の悪魔はこれを二本ではなく三本持つ。つまり、ダウン症候群である可能性を主治医は難しい顔で示唆するのだった。
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