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主治医は口を挟まない、人工妊娠中絶の選択を挙げながらも責任を取れないのだから自分の出番はここまでであると。私の両親に相談した、「最後はあなたたちが決めるべきだわ」と母は言うけど、その言葉と内心で思う感情とが必ずしも一致するわけではない。そして、夫と二人で話し合った、外が暗くなっても電気すら点けずにいつまでも。幸い私はまだ若い、持病の問題もあるがここで降ろしてもまた何年かすれば必ず子供を授かるチャンスはあるという。また、貧弱な私とその分だけ働かなければならない夫と、二人でダウン症の君を育てていけるのか。重い病気や辛い過去を抱える者は同情を嫌うとはよく聞くものの、同情を抜きにして現実に健常者とでは何もかも勝手が違うのだから。それらリスクを負ってまで貫き通す意味はあるのか、私は未だ決断できないでいる。あの少年と出会った日、彼は「赤ちゃんですか?」と訊ねた。このお腹に宿る尊い命を摘み取るか取るまいか悩んでいる自分は、つまり命の手綱を弄ぶ悪魔である。
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