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 しかし、その決定付けられた未来を知ろうとも彼は表情を一切変えることはせず、相変わらずどこに視点を当てているのかも分からない虚ろな眼差しのまま、神様である私にこう返答する。  「神様、“辛い”とは何でしょう。“人生”とは何でしょう。“生”とはなんでしょう。“死”とは何でしょう。質問の意図を理解できない僕に代わって、その二者択一を決断してはくれないでしょうか」  無表情の面とお似合いの抑揚を知らない口調は、半ば予想通りと言えよう。しかし、生と死の選択すらも他人に任せようなどと、何と嘆かわしい境遇であろうか……。  「それで僕はセイとシというもの、どちらを選べば良いのでしょうか? 神様、どうかお答えください」  彼は戸惑った面持ちで、押し黙る私を急かすように同様の質問を重ねる。それでも私は沈黙を続けざるを得なかった。それは彼を哀れんだ直後の事、思考を停止してしまったからだ。人の生と死を選ぶという重圧に堪え難い感情が湧いたのだ。
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