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 どんよりとした白、この箱庭の世界に初めて足を踏み入れた時は何の印象も抱きはしなかった。ただそこにいる、それ以上でも以下でもない。一ヶ月以上前のこと、私たちはとある診察を受けた。あれから三週間ほど経過したある日、悪夢の様な結果が返されたその日こそが白を基調としたこの世界に対する価値観をぐるりと変えた始まりの刻であった。それから更に数週間が過ぎた今日という日を、声量を抑えた叫び声と共に迎える。目を覚まして初めに覚える感覚は喉の渇きだった。不愉快な脂汗と異様なまでに高い心拍数、そして何よりおぼろげに残る見覚えのない光景と、これら状況証拠から導いて悪夢に魘されていたと考えるのが妥当である。けれど、夢の内容はその概要すらも思い出せはしない。何事も考えず頭を空白にして惚けていること暫時、視界に映り込むこの白色が私を思考の渦へと連れて行く。連想ゲームの様にあらゆる事へと飛び火していった。ルール無用の支離滅裂な思考の中でも、『森の神様』のお話が最も印象に残る内容であった。
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