2.

2/9
前へ
/64ページ
次へ
自分の頭の中で思い描いた世界であるはずなのに、こうまでも客観的に感じられるのは、おそらく坦々と続く思考が夢で見た光景を写本としているからなのだろう。起き抜けの時はその概要すらも思い出せはしなかったけれど、それは何も忘却などではなく記憶という引き出しから情報を上手く取り出せなかっただけなのである。  左見右見しても、相も変わらず世界は濁った白一色に包まれている。これが美しい銀世界であるなら良かったのだけど、身体の弱い私が寒さの厳しい環境下でその景色を拝むには命を賭す覚悟が必要となる。現実はチープなもので病院の個室だとは、いやはや物語性の欠片もありはしない。お世辞にも綺麗とは呼べない白を基調とした在り来りの病室、この古ぼけた白も病院が新たに建造された当時は非の打ち所もない純白であったのかもしれない。けれど、現状はこうまでも成り下がっている。備え付けのアナログ時計は朝食が運ばれてくる時間を示していた。
/64ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加