第3話

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港にはたくさんの船が並んでおり、そこから色んな人が荷物を運んでいる。右側を見てみれば、何やら仕入れの為に重たそうな木箱を数人で運んで、先頭に立つ人が旗を振りながらゆっくりと誘導している。その近くには、大量に買い込んだであろう貴婦人が数人の使用人に荷物を持たせて豪華な船へ戻っていく。 反対に左を見ると、出向する船に対して手を振っている女性が数名いた。再会を誓うように「またね」と何度も繰り返しながら引きちぎれんばかりに両腕を振っている。その奥には、仕入れ用の木箱を船から降ろす人々の姿。 「たくさんの人が居る…」 「ここは本当に人の出入りが激しい島だからね」 「そういえば、海賊なのに、堂々と正面から入って良いんですか?」 「ここはね、中立な街なの。人種や国を差別せず分け隔てなく受け入れる街だから、海賊が入っても誰も咎めたりしないの。その代り、ほら見て、スペイド国の腕章付けてる騎士さんが居るでしょ。 絶対的な中立である事で色んな国から守ってもらっているから、治安もいいんだよ」 ミグリアに気付き視線をやる厳格そうな騎士に笑顔で手を振ると、騎士は真っ赤になって視線を逸らし、おずおずと手を振り返した。それを見ていた道行く人々も頬を染めて隣を歩く友人や家族とひそひそ話す。 「すげぇ美人」「めっちゃ可愛い」「天使かと思った…」 ミグリアの美貌は万人うけするレベルのようで、近くにいた騎士の同僚が真っ赤になってしまった彼を羨んで小突く。 「知合いですか?」 「ううん、知らない!でも、目が合ったのに露骨に反らしちゃうのは好い気しないなって」 かわいい。
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