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epilogue
「詠月さんがいなかったら、俺……Ωに産まれてよかったなんて永遠に思えなかった。詠月さんがαで、俺を選んでくれて、本当によかった……」
父や母を追い詰めることになった自分の命を、何度も何度も恨んだけれど、途中で生きるのを辞めなくて良かったと、今なら思える──
自分は産まれて良かった存在なのだと、堂々と胸を張ることはまだ出来ないけれど、産まれて詠月に会えたことだけは後悔しない、それだけは幸運なことなのだと自信を持てる。
「──皐月、泣かないで。君は本当によく泣くね、お腹の子もきっと泣き虫だろうなぁ」
やれやれといった表情で、それもまた幸せだけど、と笑いながら詠月は涙を溜めて微笑む皐月の頬をそっと撫でる。
「詠月さんに似たら強い子になるよ」
「いや、やっぱり僕に似ない方がいい」
「えっ、なんで?」
「君の取り合いになるからさ! 決まってるだろう? そして、君は僕より子供を愛するに決まってる、そうなったらもう僕だけ蚊帳の外さ」
あまりにも真剣な面持ちで詠月が力説するので、皐月は三秒ほど大きく口を開けたまま固まってしまった。
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