第二十三話

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第二十三話

 泣き疲れて眠ってしまったらしく、薄暗い部屋の中で皐月はぼんやりと眼を覚ます。  何か音がする──。  何度も何度もしつこくそれは鳴っていて、それがインターフォンだと気付くのに数秒掛かった。  寝惚けた頭で起き上がり、ヨロヨロとインターフォンのスイッチを押すと、頭はすぐに冴えて、思わず呼吸すらも止まった。  カメラが映して寄越したのは、かつて一度も見たこともない激昂した顔の詠月だった。 「こ、こわいっ……。な、なに??」  αが怒るとこんなにも迫力があるのかと、慄きの余りマイクを押そうとする指が躊躇し、震える。  画面の中で詠月が携帯を掛けると、部屋の中の携帯が鳴り響いて「ヒッ!」と皐月は肩を揺らした。 「なにこれ、ホラー映画??」  額に嫌な汗を感じながら皐月は覚悟を決めてインターフォンのマイクを押す。 「は、はい……」と出した声は予想以上に震えた。 「来たぞ!! 攫いに!! 開けろ!!」  壁に両肘をついて詠月はマイクに近付き、怒鳴りつける。 「そんな騒いだら警察呼ばれるよ……っ、そこっ、エントランスなんだから、声すごい響くからね」 「余計な心配するなら今すぐ開けろ!!」     
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