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prologue
まだ何もされていないのに、体の中が、奥が、異常に熱い。
下腹部がジンジンして、この男に早く触って欲しくて、そればかりが頭をよぎる。
肌を撫でられるだけで感じてしまって、恥ずかしいのにもっとして欲しくなる。詠月にもそれが伝わっているのか、それとも詠月も同じ思いなのかその瞳は熱で潤み、早く喰わせろと言われているみたいだった。
体の中に熱い楔が打ち込まれ、皐月は初めての感覚に痛みが走るものの、痛みよりも恐ろしい程の快感に声を抑えられずにいた。皐月はそれが恥ずかしくて堪らなくて、誤魔化すように話す。
「お、俺……」
「──何……?」
「──俺……、少女漫画、描いてんの……αとΩが……恋する話……。変……でしょ?」
詠月は少し驚いたような瞳をしたものの、すぐに笑顔になり皐月の頬を優しくなぞる。
「──やっぱり君はロマンチストで可愛い…」
詠月の瞳が、皐月には余りに眩しくて、心臓が怖いくらいに震える。
──あるんだ。
現実にもそれはあったんだ。と皐月は唇を噛み締め、声も出さずに泣き始める。
「痛いの……? 大丈夫?」
優しい声色をした詠月が心配そうに皐月の頭を撫でるが、皐月は小さくかぶりを振って否定した。
「──ん、ううん……。違う……」
抱きしめられた体から心臓の音がする──。
自分の音と、詠月の音と……どちらがどちらなのかもわからない程にそれは大きく、一緒に波打つ。
今日会ったばかりなのに、最初は拒絶されたのに、皐月は言わずにはいられなかった──。
涙で溢れ滲んだ視界で必死に詠月の瞳を追う。
「詠月さん…俺の事、番に──」
「皐月くん──僕と、番になって」
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