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「高槻!」  振り返ると、最近話をするようになったクラスメイトが廊下の向こうからやって来た。  ーー高槻ってさ、入ったころはもっと暗かったよな? あんま人から話しかけられたくなさそうだったし、授業が終わるとさっさと帰ってたし。それがあるときから雰囲気が柔らかくなって、実際話してみたら、お前変だけど案外面白いし。  ーーなんだそれ。  身も蓋もない言葉に、暁生は苦笑した。人となるべく関わらないようにはしていたが、暁生自身は特別変わったという意識はなくて、「そんなに違う?」と訊ねると、友人は「うん。あ、こいつ、女でもできたなってはっきりわかったもん」と、にやっと笑った。  いや、女はあり得ないけど・・・・・・。暁生は、最近バイト先でも似たようなことを言われたのを思い出した。  ーー暁生さん・・・・・・。  ふいに懐かしい誰かの声が蘇って、暁生はハッとなった。もどかしい思いに歯噛みする。頭の中にぼんやりと浮かぶ影に向かって、誰なんだよお前は、と睨みつけるが、もちろんいらえはない。 「高槻? どした、急に黙って」  半ば苛立ちを隠せない暁生を、友人は不思議そうに眺めた。 「・・・・・・いや。なに話してたっけ」 「だからさ、バーベキュー。みんなで行こうって話しててさ。高槻も行かない?」  正直、気が進まなかった。元々大勢で騒ぐのは苦手だし、遊ぶ金もない。断る気配を察して、「ま、考えといてよ」友人は明るく笑った。  授業を終え、「気が向いたらいつでも言って」と、諦めずに誘ってくる友人に手を振ると、暁生は歩いて家へと向かった。
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