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本当に、ただゆっくり休ませるだけのつもりで連れて帰ったはずが、誘われるように伸ばされた恋人の腕についついあらがい切れなかったのは、不可抗力としかいえない・・・・・・。
その場でじっと黙り込んだ隼人に、暁生はため息をついた。
「ただの風邪だよ。寝てれば治る。悪いけどバイトの時間まで寝てたいから帰ってくれる?」
「はっ!? なに言ってんの!?」
思わず声を上げた隼人に、暁生は眉間にしわを寄せた。
「あっ! ごめん・・・・・・」
しおしおと、言葉尻が小さくなる。無言で部屋の中に引き返した暁生の後を、隼人は「おじゃまします」とついていった。
部屋の中は冷えていた。具合の悪い人がいていい部屋ではない。
隼人は頭のてっぺんだけを上掛け布団から出して、潜り込むようにして寝る暁生のおでこに触れた。隼人の行為を非難するように、暁生の眉間にしわが寄る。
熱い。
ぐるり部屋の中を見渡すが、救急箱などは見当たらなかった。きっと最初から常備していないのだろう。
とりあえず熱を下げなきゃ。
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