第1章

4/4
3人が本棚に入れています
本棚に追加
/4ページ
食べたい物を頭に描き味を思い出せって言っても、そんなの無理だ。 講堂のあちこちからすすり泣きが聞こえる。 「グス、お母さんの野菜がゴロゴロ入ったカレーが食べたい」 「ヒック、母ちゃんの肉じゃが、また食いたいよぉーー」 「ママが作った唐揚げを食べたい、エーン」 私達教師はレーションを泣きながら食べている生徒の下に行き、その身体を優しく抱きしめた。 去年のあの日、文明が崩壊したあの日。 新設された中高一貫学校の、中学1年生だけによる初めての文化祭を明後日に控え、学園に遅くまで残って最後の準備に勤しんでいた生徒と教職員合わせて約100人は、学園の地下に造られていた10万人程の人を収容できる核シェルターに逃げ込み難を逃れる。 あの日から1年、私達は何時か地上に戻れる事を信じて、核シェルターの中で学園生活を続けていた。
/4ページ

最初のコメントを投稿しよう!