1人が本棚に入れています
本棚に追加
身体が芯から冷えきってしまったので、私たちはは虫類館へ駆け込んだ。
途中、カフェオレ男が転びそうになった。転べばよかったのに。
リクガメがひっくり返っていた。
手足をばたつかせて起き上がろうにも起きあがれない。
「ほら、カフェオレ男、友だちだよ」
「僕、リクガメじゃないッス」
「にしても、かわいそうだなあ、あれ、一生ああやってんのかな?」
「誰か呼びに行った方がいいのかしら?」
「あ、飼育員さん走って来ましたよ」
私たちはリクガメが起こされるのを見届けて、熱帯植物園へ行った。
この巨大な温室こそ、常夏の国かと思ったのに、
想像以上に寒くて結露がひどく、ところどころにバケツが並んでいた。
ときどき天井から水滴が落ちて来て、一度カフェオレ男のおでこにヒットした。
休憩できそうなテーブルを見つけるとカフェオレ男はトイレへ行き、
私ときこちゃんはテーブルにつき、
恐竜時代の箱庭みたいな木々を黙ってしばらく眺めていた。
先に口を開いたのはきこちゃんだった。
「お酒があればいいのに」
「お酒?」
「うん、甘くて強いお酒がいいな」
熱帯の木々に包まれて、甘くて強いお酒を飲むなんて、
まるで南の島のバカンスみたいだ。
最初のコメントを投稿しよう!