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「ベッドもあればいいのにね」
私がそう言うと、きこちゃんは、びっくりした感じに目を開いて私を見て、
そしてふわりと笑った。
「そうね、ベッドもあると素敵ね」
「前にね、ここに来たときに、一緒に来た人もそう言ってた」
「男の子?」
きこちゃんはにっこり笑った。
「ここにベッドがあって、甘くて強いお酒があって、
そしてずっとふたりでくっついていられたら素敵だねって、そう言ってた。
それはもっと暖かい季節で、こんなに結露がひどくなかったけど」
無言で木々を眺めながら思ったことは、おそらく、私もきこちゃんも同じだろう。
今までの私たちに、ぺたりとくっついた男の子のこと。
そしてこれから出会い、ぺたりとくっつくであろう男の子のこと、
男の子にくっついていた私たちのからだ、くっつくであろう私たちのからだのことだ。
こころとからだはつながっていて、こころがからだに選択させる。
からだはこころのせいにして、私たちに男の子を選ばせる。
そのことは、自分と、
たくさんの時間と場所を共有してきた「お友だち」が知っている。
「ひとりで抱え込むのではない」という、寛容。
それを相互に感じあうことができるのが「お友だち」という役割だった。
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