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きこちゃんは高校の、あの放課後の教室の窓辺から、
その圧倒的な存在感を私の目の前に保ち続けている。
うっとおしいほど豊かに繁る熱帯の植物を見つめ、
おだやかで、それでいて力強い眼差しを横に感じる。
私もきこちゃんと同じものを眺める。
そして思い浮かぶものがある。私の「今」のこと。
私はいつかの、カフェオレ男の手のぬくもりを思った。
カフェオレ男がどういう子かなんてちっとも知らなかったし、興味もなかった頃、
私はカフェオレ男の手を握った。気づいたら握っていた。
それはがちゃがちゃとした宴会の席で、
カフェオレ男の指は、私に上手にからんでいた。
私よりもほんの少し骨太で、温かで、私の手の形に沿うようにくっついた。
手を握っているのに気がついてからも、ずい分長い間そのままにしていた。
私の手によくなじみ、心地がよかったから。
やがてだんだん罪悪感に似た気持ちがわいてきて振りほどき、ゆびずもうを仕掛けた。
私の勝ち。
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