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円山の東急ストアの前で、カフェオレ男(お)にばったり会った。
「カフェオレ男!」
と私が叫ぶと、彼はびくっとしてからゆっくりと振り返り
「公衆の面前でそれはないでしょう」と言った。
カフェオレ男の吐息が彼の顔にソフトフォーカスをかける。
顔のパーツのほとんどが波ダーシでできている。それがカフェオレ男だった。
ちなみに波ダーシは「~」。
「かふぇおれお?」
「そう、カフェオレ男」
「あかりさん、何でこんなところにいるんスか? そちらはお友だちですか?」
というわけで、手短かな紹介ごっこが始まった。
きこちゃんは私の高校からのお友だちで、カフェオレ男は職場の後輩。
この近くのアパートに住んでいて、今、食材の買い出しを終えたところ。
私ときこちゃんは円山動物園へ行くところ。
「えっ」
カフェオレ男の波ダーシに点がついた。ちいさな目を見開いたので。
「円山動物園ってね、冬でも開園してるんですって」
きこちゃんがそう言うと、カフェオレ男は後頭部をぼりぼりかいて
「いやぁ」と言って、こっちを見た。
「素敵だろう?」
「いやぁ」
「何よ」
「だって冬ですよ」
私ときこちゃんは顔を見合わせた。
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