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「おたる水族館は閉館しちゃうんだけどね、円山は開いてるんですって。
今朝ね、ニュースでやってるのを見たの。で行くの」
「その格好でですか?」
カフェオレ男は明らかにきこちゃんを指して言った。
「何よ」
「いやぁ」
カフェオレ男はそう言ってうつむき、
「素敵ですぅ」と言った。
「行く?」
「え?」
「動物園」
「僕?」
ということで3人で一旦カフェオレ男のアパートに立ち寄って買ったものを置き、
動物園へ向かった。
チビの頃の記憶をたよりに宮越屋珈琲の横を通り過ぎて、
円山八十八ケ所のけものみちを進んだ。
けものみちの新雪をばふばふと踏みながら
「気軽に考え過ぎた。やっぱりタクシーで来ればよかった」と痛感した。
よくよく考えれば、ここの道は「遠足」で通る道なのだ。
意外と距離が、そしてアップダウンがある。
空は真夏のように青いのに、その空の下の木立、
私たちが歩いているあたりは雪が音を吸収して、しんと静まり返っていた。
誰かの呼吸がいつも以上に大きく耳に響く。
ずんっという音を立て、さらさらの雪の固まりが落下した。
服に包まれている部分はうっすらと汗をかきはじめていたが、
つま先と膝が痛い感じに冷たくなっていく。
途中、ただでさえけものみちだというのに、その道が途絶えた。
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