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「すごい、誰もいない」
「ええ」
「なんだか核戦争後の動物園みたいね」
「まずは歩きましょう」
猛きん舎を抜けて視界が開けたところにさる山がそびえていた。
きこちゃんが真っ赤なカシミヤのコートを翻してダッシュで駆けていった。
「リアルドラマだ!」と私も叫び、楽しく駆けた。
カフェオレ男が
「はぁ?」と情けない声を出してトボトボとついてきた。
さる山は本当に見飽きない。
さるとは思えない程の、手のひらに載ってしまいそうなほど小さなさるが、
親らしきさるにしがみついて移動していたり、
若者っぽい2匹がものすごく歯をひんむいてにらめっこをしていたり、
追いかけ合ったり、はたまた微動だにせず上の方で放心していたり。
「繁殖!」ときこちゃんが指さした。
2匹のさるが、見ているこちらが気恥ずかしくなるほど、
ものすごい勢いで繁殖行動をしていた。
私はげらげら笑い、きこちゃんはわくわくと眺め、
カフェオレ男は真っ赤な頬を両手で押さえながらいやいやをした。
性医学的に言うなら、これは後背位、と言うに違いない。
じゃあ、ヒトの正常位って、さるにとっては異常なのかな?
正常位で繁殖行動をとる動物って、そういえば見たことがない。
「あかりさん笑い過ぎですぅ!」
カフェオレ男が乙女全開で私を非難した。
私はていねいに「ふんっ」とそっぽを向いた。
きこちゃんが私たちを手招きするので寄ってみると、さるの看板があった。
「次郎長jr」と書いてある。
「『さる山で一番強いオスです。』」
「『よくボスザルと言われますが群れを統率する力はありません』」
「ちょっとぉ、そんな顔で僕見るのやめてくださいぃ」
面白過ぎ。
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