甘く冷えた街で

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おばさんは本当にきれいに歩く。 背筋も首も伸ばして、必要最低限のヒールの音しか響かせない。 スカートから見える脚はつやつやしてて、 ふくらはぎから足首にかけて美しい弧を描いている。 それでも「若い女」の脚じゃない。 たくさん歩いて、いろいろなことを経験した感じの脚だ。 ジャケットのウエストがしぼられているからか、 スカートがふんわりと広がっているからか、 おばさんのくびれは見ててあきないほど、きれいだ。 一緒に住んでいるから知っていることだけど、おばさんは下着に頼らない。 ブラジャーもショーツも、ガーターさえも、 脱いで、くしゅっとそこに放置したら、 どれがどれだかわからなくなるほど繊細なレース使いなのだ。 不粋なパットなんかブラジャーについてないし、ガードルだって持っていない。 第一、ガーターベルトというものをつけた女の人の実物は、 真希おばさんを見たのが初めてだった。 ジャケットの下には、白なんだけど、 角度によって微妙な色に変化するキャミソール。 大振りのネックレスをさげたちょうどその先に、胸の谷間がのぞいている。 谷間メイクした女の人はたくさん街にいるけれど、 真希おばさんほどの品格ある迫力を持った胸元の女の人はそうそういるもんじゃない。
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