音楽教師の悦楽

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音楽教師の悦楽

「あれ?どうしたの、こんな時間に。」 空いた窓から降り注ぐオレンジ色の夕陽を背後に、その男は立っていた。 「すみません、忘れ物を、取りに、、、」 こんな時間の音楽室にまさか人がいると思っていなかった少年はおずおずとそう返事をした。元来の人見知りも手伝い、こうした急な対人場面を少年は苦手としていた。 「ふ~ん、何忘れたの?」 「あ、えっと、リコーダー、、、です」 「そっか~、明日曲のテストだもんね、そりゃ困るよね~」 「は、はぁ、、、」 少年の焦りなどどこ吹く風といった態度で男は陽気に話しかけてくる。癖のある多めの黒髪を窓からの風になびかせ、愛想の良い笑みを浮かべている。じっとこちらを見てくるので、少々居心地が悪い。少年はそれとなく急いで自分の席へ行き、引き出しの中を覗いた。 「良かった、」 目当てのものが見つかり少し安堵する。 「そういえばさあ、」 教室を出ようとしたところでまた男は話しかけてくる。 近くのグランドピアノにもたれかかりながら男は煙草を一本抜き取った。 「君、リコーダー苦手だよね?」 「え、あ、はい、、、」 「授業中もさ、みんなで吹いてるとき君の音だけずれてんの。いっつも気になってた。」 「あ、、、、その、すみませ」 「謝んないで。責めてるわけじゃないんだよ~」 男はにっこりと笑い、煙草の先端に火をつける。 なんとなく、嫌な予感がした。 「ただ、このままだと明日のテスト、ちょっと不安だな~ってね。」 「えっと、、はい、、、、、」 「ここで俺が教えてあげるからさ、練習してかない?」
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