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「あーあ、」
不意に気の抜けたような声を男が発する。
「萎えちゃったじゃんもぉ、」
先ほどまでの強欲剥き出しの言動が嘘のように男は少年を拘束していた腕の力を緩めた。
「うわ、これ結構きつく結んであるのな。」
更には縛めの縄を解いてくれる。
ぱらりと全身の縄が弛緩した瞬間、今まで堪えていたものが一気に溢れてくる。
「……っっ、」
どくどくと少年の中心から精が噴き出す様子を見て、何故かこの男は安心したような表情を浮かべている。この男の考えていることがいちいちわからない。やはり芸術を志す者は少し常人には理解し得ない部分があるものだろうか。
はあはあと荒く息を整えながら少年は思考を巡らせた。さっきの影は一体誰だったのだろうと。
「何か考えているね。」
見透かすように男が笑う。
「世の中には考えても仕方ないことがいっぱいある。」
気怠そうに喋りながら先ほどまで使用していたキャンバスや筆を片付け始める男。
「いっつもそう。だからたまには、考えることじゃなく感じることを大切にしたほうが良いときもある。」
「感じること………」
「そ。この絵、見て。」
そう言って男はキャンバスの面をこちらに向ける。
先ほどまで男が筆を走らせていた絵である。
「これ…………」
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