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「だーいじょうぶ、後でちゃんと掻き出してあげるから。」
よしよしと少年の頭を撫でる。
「や~楽しかったよ。ありがとね~。」
意外にも日は沈んでおらず、音楽室の中にはまだ温かい色の光が満ちている。
「夏は日が長くていいねぇ。」
まだ泣き止まず小刻みに震える少年の小さな頭を撫でながら音楽教師は夕陽に目を細めた。その光の先に一体何を見ているのだろう、刹那浮かべた消え入りそうなほど儚げな表情は、届かない過去に思いを馳せている人のようだった。
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