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ばれるわけには、いかないから。
「そうですか。では補講を再開しますよ。」
「…はい……」
名残惜しくも男が離れていくのを感じ、少年はほっ、と胸を撫で下ろした。
ーこんなものばれたら…
黒髪の下で滲む汗。僅かに上がる息。
「やはり、何かおかしいですね。何か私に隠しているでしょう。」
男が再度振り返る。
「、え、いぇ、そんなことは…」
必死に誤魔化しても、この知力に満ちた鋭い眼差しに晒されると、もう何もかもが手遅れのような気がしてしまう。
「制服を脱ぎなさい。」
「…っ!?」
突然の命令に身体が硬直する。
「ぁの、どうして…」
「いいから。」
眼鏡の奥の冷えた瞳に有無を言わせない圧力を感じ、少年はおずおずと制服のベストに手をかける。ひとつ、ふたつ、、、拙い手つきでボタンが外されていく。それを手を貸すでもなくじっと立ったまま見下ろす男。
「…ぁの、」
「なんですか?」
「はずか、しいです…」
この状況を止めたくて、なんとか出た言葉がそれだった。
「でしょうね。」
しかしその甲斐もなくー。
「だって、あなたここに何を入れてるんです?朝からずっと…。」
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