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そこには少年の形など微塵も無かった。
眩ゆいばかりの黄色と白が折り重なり紡ぎ出す光の道。見ていると柔らかい気持ちになるような絵に少年はしばし見入ってしまった。
「綺麗……………」
思わずそう呟いた少年に
「だろ?」
と自信たっぷりに答える男。その顔には笑みさえ浮かんでいる。
「俺にはこんなふうに見えるんだ。」
「え?」
「感情に身をゆだねてみな。何もかも失ったって、心だけは最後に残ってるんだから。」
そう答えた男はキャンバスをさっと仕舞うと少年を棚の上から丁寧な所作で下ろしてくれる。
「わりぃな。付き合わせて。立てるか。」
「はい…………」
相変わらず態度がころころ変わる人だ。
けど。
この人になら。
聞けるかもしれない。
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