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少年が眠りから覚めると白い世界が広がっていた。
ぼんやりする頭で一面の白を眺めていると、何のことはない、それは部屋の天井であった。
ああ、そうか……。
少年はゆっくりと思い出す。
今朝急に気分が悪くなり保健室で休ませてもらうよう願い出たのだった。
寝台に横になり、そのまま寝入ってしまったのだろう。どのくらい自分は寝ていたのだろうか。
寝台の横に窓があり、薄いカーテンの向こう側から陽光が透けている。身を起こし窓の外を伺う。
「え………」
愕然とする。校庭を囲う木々の向こう側には、燃えるような夕焼けが広がっていた。
丸一日もの間寝ていた………。
ただの一度も起きることなく…………。
その日の授業もとっくに終わっているようで、耳をすませど生徒や教員の声など一つも聞こえてこない。静かすぎて不気味にすら感じられる。
「帰ろう…………」
誰にともなくそう呟いたとき。
声が。
聞こえた。
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