国語教師の誘惑

15/22
前へ
/130ページ
次へ
「ちゃんと目を見て。」 「…っ、」 これ以上の辱めなどあるのだろうか。 これ以上のことを口になど、少年には到底できるはずもない。 この男は、一体何がしたいのだろう。 少年はふとそう思う。 ただただいたずらに少年の自尊心を抉るようなことばかりする。羞恥を掻き立て、蹂躙し、限界まで追い詰められる。 この男だけではない。 理科教師、音楽教師、数学教師、美術教師… この學校は……… 學校は…………………… 「………こないだ、」 絞り出す声。 「なんだい、」 再び男の手のひらに押される下腹部。 「ひ、…っぐ………」 それでも。 「可愛い泣き顔でそんな怖い目しないでくんない?どうしちゃったのかな?」 それでも。 知りたい。 少年の中で何かの弾ける音がした。 「こないだ、美術の……、先生に聞きました……」 男の眉がぴくりと動く。 「何を…聞いたのかな?」 「この、學校について……………です…」 「…ふぅん?何て?」 少年は、そのガラス玉のような濡れた瞳を真っ直ぐ男に向けていた。男の瞳へ。この蒼い瞳へ。 「何故、先生がたは僕にこんなことをなさるのか……。そう聞いたんです……」
/130ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1306人が本棚に入れています
本棚に追加