理科教師の安寧

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乱暴な所作で男は少年から自身を引き抜くと、冷酷に、静かな口調でまた口を開いた。 「君は誰のものだ、言ってみなさい」 ぞくりと少年の背筋に流れたのは、先ほどまでの快感の波とは少し違っていた。 男の目が、一瞬月光を映し妖しく煌めいた気がした。 「せん、せいの、、、」 「聞こえませんね。」 「理科の、せん、せいの、、、、」 もつれる舌で紡ぐ言葉は台から滴る水音にかき消えてしまう。 止んでいた下半身への責め立てが再開される。「理科の先生」、そう呼ばれた男の太い中指がまたぐちぐちと嫌な音を立てて少年の中を犯した。指を中で無理矢理折り曲げられると、どこも敏感になった内壁がたまらず疼いてしまう。強すぎる快感に限界を感じていた。 「そうですね、君の言う通り、」 空いている手で少年の顎を掬い耳元に口を近づける。 「僕だけのものですからね、これからも、ずっと、、、」 耳元で囁かれ、脳の一番深いところまで犯されてしまったかのような感覚に少年は思わず目を瞑った。瞼の裏の闇にさまざまな色の光が大きく小さく海月(くらげ)のように漂うのを眺めている内、自分自身もやがて重力を失った海洋生物のようにぼんやり波の無い闇に身を委ねてゆく。もう何も考えられなかった。 気を失った少年の銀に反射した涙が紅い頬を伝い艶やかな黒髪を濡らす。そっと一束掬い、男は髪に口づけた。 「これからもずっと、一緒ですよ、、、、」 瞳に映るのは確かな安寧と、昏(くら)い光。 寄宿舎の一角の、遠い夏の夢。
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