技術科教師の憧憬

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「なんだね。はっきり答えたまえ。まあ、無理もないか。わたしの作品の美しさを理解するには凡俗たる者達にとって難しいことだろうからね。しかしまあ、わたしが四の五の言葉を並べ立てたところで本当の作品の素晴らしさなどわかるはずもない。作品……機械は動いてこそその真価を見る者の眼前に晒し出すのだから。今回このような奇怪千万な……ん?何?奇怪と機械を掛けているのではないぞ。まあいい。この一見するとけったいな、奇怪千万な代物を作成したのにはきちんとした理由がある。理由というのは、君には教えられない決まりだからこの場で言うことはできないのだけれど。わたしはこのような機械を作る理由を……機会を与えてくれた奴に感謝せねばならない。ん?何?機械と機会を掛けているわけではないぞ。まあいい。理由なんてどうでもいいんだ、わたしにとっては。わたしはいつだって崇高な創作意欲の赴くままに作品を作るだけだ。しかし、奴が居なければわたしは一生涯、おそらくこのような物を作ろうなどと夢にも思わなかっただろう。そういった意味でわたしは彼に感謝しているのだ。心からね。さて、前口上が長すぎたね。何?今更怯えているのかね君は。何も怖がることはない。安全性には万全を期している。わたしの算術が信用できないとでも言うのかね、君は。愚かな考えだねそれは。今からこれを動かせば、きっと君は君自身の考えを改めざるをえないだろう。とくと味わうが良い。わたしの設計は完璧だ」
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