体育教師の情熱

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体育教師の情熱

 暗闇の中、8つの紅い光がちらちらと燃えている。光は等間隔に並んで円を形成し、その中心に青い光が弱弱しく明滅している。少年は霞んだ意識の中、ぼんやりとそれを眺めていた。 ここは。どこなんだろう。 不意に青い光が強風に煽られた炎のように瞬時大きくなったかと思うと、搔き消えそうなほど小さくなった。 「……っ!」 唐突な息苦しさが少年を襲った。闇の中冷たい床に膝を折る。左胸が痛くて敵わない。 「だれ、か……」 霞む視界の中、9つの光達だけが美しく輝いている。ひゅうひゅうと息が嫌な音を立てた。この感覚には覚えがある。少年は朧げな記憶の底にきらりと光る何かを見た。これは、「発作」だ。 「僕は……病気、だった……?」 そうだ。たしか僕は。 幸いにも苦しさはすぐに和らいでいった。青い光は元の大きさに戻っている。あの青い炎はきっと自分自身なのだな、と少年は思う。では、周りを囲んでいる紅い光は一体……。  不意に意識が霞んでゆく。あ、まだこのことについて考えていたいのになと思う。少年の願いは叶わなかった。意識というものにもしも目があるのだったら強制的に目隠しされたような気がした。これ以上このことについて考えるのは許されないとでもいうように。
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